シニア大学専門コースに参加しました 2017年5月18日

シニア大学専門コースに参加しました

 

 5月18日(木)に県社会福祉総合センターで、長野県長寿社会開発センター(以下センター)が主催する、シニア大学専門コースの講座が行われました。

 

〇 シニア大学専門コースとは

 長野県では現在進行中の総合計画においてシニア・シルバー世代が、その培ってきた経験を生かして、積極的に就業や社会参加を行うことができる「人生二毛作社会」の実現を目標に掲げ、そのためにこれまで実施してきたシニア大学の内容を、「一人ひとりの豊かな老後のデザイン」から、「社会貢献を通した自己実現」に焦点化し、講座内容の編成も大幅に見直して取り組みを進めてきました。

 平成28年度には県内に6人のシニア活動推進コーディネータ(以下コーディネータ)を配置し、10の圏域単位で担当制を設け、シニア・シルバー世代の社会貢献活動を具体的に支える取り組みを進めています。

 平成29年度にはシニア大学専門コースを設置し、シニア世代当事者の中に、社会貢献活動をコーディネートできる人材育成に取り組みはじめました。

 一方シニア・シルバー世代の活動の現場である地域において、県内くまなく設置されている公民館とシニア・シルバーの活動がつながることで、シニア・シルバー世代にとっては自身の活動現場の広がり、公民館にとっては元気なシニア・シルバー世代との結びつきによる地域活性化の取組みの推進に結びつくのではないかと考え、センターと公民館の連携可能性を探るために講座にオブザーバとして参加させていただきました。

 

〇 パワーあふれる受講生のみなさん

 専門コース受講生は30人、県内各地から参加されており、飯田からも二人の参加者がありました。専門コースは年間35時間、講座を通して参加者自身がそれぞれの地域で取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている活動の中身を磨いていくことと、自分の周囲にいるシニア・シルバー世代がそういう活動にかかわっていくためのコーディネート力をつけることがねらいです。

 専門コースでは参加者全員での合同学習会とともに、「コミュニティデザイン(地域創造)」「ビジネスデザイン(社会的起業)」「ライフデザイン(創造的な生き方)」という3つのコースにわかれ、それぞれのコースにメンターがおかれ、参加者一人ひとりの思いを形にすることもねらいです。

 今回の講座は2回目で、尚絅(しょうけい)学園大学特任教授の松田通雄氏が講師となり、参加者が主体となったスタイルで講座が運営されました。松田氏の専門は社会教育・生涯学習分野で、人が互いに学びあうことで、生き生きとした地域づくりが実現できるという考え方のもと、「だがしや楽校」の全国展開など具体的な実践を通した地域づくりの取組みを支援されています。

 講座は冒頭から参加者同士がグループとなり、互いの思いを交換しながら参加者同士のつながりを広げ、ほかの人たちの思いから学び、参加者同士の話し合いを通した社会貢献につながる活動づくりを模擬的に体験する形で進められました。

 つまり講座の運営全体が、コーディネータ力をつけるための手法について、実践的に学ぶことがねらいでした。

 当日の参加者の自己紹介をお聞きしましたが、一人ひとりの参加者が、多彩な経験を持たれている方々で、強い思いを抱いて講座に参加されることがわかりました。

 発言を通した参加者の具体的な実践をいくつか紹介します。

 「地域の人たちのたまり場の運営」「地域の歴史を皆に伝える活動」「音楽活動を通した地域貢献」「若者たちの自立支援」「昭和の文化を伝える活動」「祭りを通した地域活性化」「UIターン者の受け入れ」「若者たちへのキャリア教育」「高齢者と子どもたちがつながる場づくり」「コミュニティスクールへの支援」

 また、参加者の傾向として、定年退職などを契機に県外から長野県内に移住し、現役時代に培ったキャリアを生かして、地域の中で活動を進めようと考えているケースが多いという特徴があります。このことはまた、もともと地域におけるつながりが弱いという点で、そういうつながりを広げる場を求めているととらえました。

 

〇 松田先生100年人生五カ条

 講師の松田氏の100年人生5か条を紹介します。

  1. お互いの人となり、個性がわかりあえるゆるやかなかかわりを広げませんか。せっかくの人生、残り時間で、人との出会いの豊かさを味わいましょう。
  2. 人生の卒業研究をしましょう。あなたならではの人生で得たことを何らかの形で次世代にまとめ残しましょう。
  3. 相手に問いかけましょう。相手を気にかけ、話に耳を傾け、うなずき、共感しましょう。そうすれば、人はあなたを気にかけてくれます。
  4. 過去にこだわらず、思い込まず、やわらかく対応しましょう。そうすれば、いつも新たな発見と生きる楽しさを感じるはずです。
  5. もし、あなたのご両親が100歳まで健康長寿だったら。健康長寿の幸せは、次の世代が喜んでくれる生き方をすること。

  シニア大学卒業生による個人あるいはグループの活動はまだまだ社会的に認知されていないことから、学校などの地域の現場にかかわる時の信用づくりが課題のようです。それならば公民館がつなぎ役となれば、地域や社会につなぐ際の信用が生まれ、またそういう人たちの取り組み姿勢を測ることもできるのではないかととらえました。全国で一番多くの公民館が設置されている長野県ですが、戦後荒廃した郷土復興の拠点としてそれぞれの市町村に設置された公民館が、初期の役割から次第に「個人の生きがいづくり」にシフトする傾向があったものの、再び地域振興の拠点として見直され始めている今日、シニア・世代の社会貢献を支える取り組みを進めるセンターとの連携は、ぜひ模索してみたいテーマと考えています。

 また、地域に共通する今日的な課題は、少子高齢人口減少社会の進行とこのことを克服するための持続可能な地域づくりにあるととらえています。このことから次の時代を担ってくれる子ども・若者の学びや育ちの支援と、シニア・シルバー世代が現役として地域や社会を支える取り組み支援が極めて重要であり、二つの課題を重ねて取り組むことが地域の課題解決にとって大変有効ではないかと考えています。

 

〇 シニア世代と公民館

 松田氏の提言は、専門コースへの参加者にとって、自身が培ってきた現役時代の経験を生かすとともに、地域や社会で活動するに際して勤め人時代の価値観を見直すことも必要であるという投げかけをしているととらえました。