尼崎 うふふなゼミに参加しました 2017年8月7日

 8月7日(月)尼崎市市政情報センターで第3回「うふふなゼミ」が行われました。これは、船木成記さんが尼崎市顧問の立場で主催する、尼崎市若手職員の研修会です。今年で5年目を迎えるこの研修会は通年で自治体の仕事や政策に関わる問いを立て、改革改善の提案を作るという構成で、ゼミの締めとして、市長に対しゼミ生が学習成果を報告します。

 毎年研修の前半は、グループごとにモデルとなる問いを立て、結論まで導いていくワークショップから始まります。私が参加した8月7日(月)は3回目のグループワークで、株式会社エンパブリック代表取締役の広石拓司さんを講師に「問いの立て方」をテーマとした講義が行われました。エンパブリックは、地域・組織の人を活かす仕事づくり、場づくりのノウハウを体系化し、多くの人が使える ツールやワークショップとして提供する会社です。

 

〇 講義「論述の基礎知識」の振り返り

 

 最初に「うふふなゼミ」運営委員長の名可さんから、昨年度の講座のうち、東北大学教育学部の佐藤智子さんの講義「論述の基礎知識」について、レポートされました。

 論述で目指すのは「スタディスキルの獲得」調べる。読解する、書く、発表する技術であり、自律的・主体的な学習するための基礎的なスキルです。

 何故スタディスキルが必要なのか。受験勉強は先に答えが与えられているが、仕事の上では自分たちで課題を発見することから始めることが必要です。

 レポートには報告型のレポート、と論述型のレポートがあります。

 論述型は、あらかじめ与えられた問いについて自分の意見を書く、あるいは問いを自分で建てて意見を書くスタイルです。

 論述の構成要素は、自分の意見や考えを、筋道を立てて述べることで、「問い」「意見・主張」「論拠」で構成されます。

 レポートと感想文の違いは、レポートは論理的、客観的、参考文献が不可欠ですが、感想文は物語的、起承転結、主観的で、参考文献は必ずしも必要としない、という違いがあります。

 論拠となりうるのは、推論(論理的思考によって推理・推定する)と客観的事実です。科学的に重要なのは、第3者が同じ手続きを行った場合に再現できる、反証可能性のあることです。

 論述の流れは、「問いを立て」「推論によって論拠を考える」「推論に基づいて客観的事実に基づいて裏付けを説明する」

 裏付けに用いるデータや情報の「正しさ」や「確からしさを」注意深く判断する必要があります。

 論述的に取り組むことは、自分で考えて判断するためのトレーニングです。

 

〇 講義「問いの立て方について」広石拓司さん

 

 続いて、広石さんの講義が行われました。概要は次の通りです。

 ▽ 問いかけ力を磨こう。

 ・新しい仕事を作り出せる社会に。

 ・日々の暮らしや目の前にある課題を放置せず、周りの人たちの力を活かし、協力して解決していく。

 ・そのプロセスに必要なノウハウを、多くの人が使える形に体系化し、普及していく仕事。

 ・答えを完全に作ってから渡そうとするから皆がついていかない。

 ・世の中の変化は問いかけからしか生まれてこない。

 ・自分が常に疑問を持っていること、そして「かける」ことが必要「問うこと」「関係性を作ること」

 ・皆で一緒に考えと問いかけになる。

 ・正解がないということは、1+3=4正解がある 〇+●=4正解が複数ある

 ・正解がないとは、2+3=5 (2*8-4)÷3+1=5後者の方が頭を使う。

 ・クリティカルシンキング 現状と違うというギャップが問いになる

 ・正解がない状況で問われているのは私。

 ・社会起業家は課題解決の担い手といわれているが、実はそうではなく社会起業家は問いかける人たち。こういう問題はほっておいていいんでしょうかというように。

 ・ケアプロ 川添さんは、東大の看護師の時代に、病院に来る人たちは手遅れの状態の人たちが多いことに気付いた。それは健康が気にはなっていてもなかなか病院に行けなかった。それは健康診断を受けていない人たちが多くいるため。健康診断に行かなければならないという状況を作るために、生活の身近な場所に出かけてみようと、駅前でセルフチェックで簡単な血液検査を行った。それがきっかけで病院に行く人たちが生まれていった。パチンコ屋さんの前で、500円でチェックしたら多くの人が受けてくれた。

 ・現状の変化を起こすときに変えなればならないのは、問いを変えること。

 ・これまでは正解が通用した。国が決めたことを、県を通して市としてやればよかった。ここが自分の役割で結果を出す。間違えずに進めるように学ぶ。

 ・しかし現代は正解がない。住民とともに問いを作ること。試行錯誤して失敗から学ぶ。持ち寄り、相互作用するプロセスから生み出す。

 ・学習転移 これまで 専門家が作った知識を教師が伝達し、学習者が習得し、学習者が応用する

 ・経験学習 経験、省察、概念化(一般化)、新しい状況での試行

批判的学習 手段の批判、目的の批判、見方、考え方の批判(ほんとうにそうなのか)

 ・正統的周辺参加 学習者は、職場などの実践共同体で実践しながら学ぶことで、状況への対応力を習得し、一人前になる。(企業内人材育成 東京大学 中原淳OJTは経験学習と批判的学習を合わせて実践することが必要。

 ・一人前になるというプロセスはいろいろな人との関係性の中から学び取る日々の経験の中で作り上げられる。

 ・上記の4つの学習方法があることを知り、組み合わせていくことでいろいろな変化を生み出すことが大事。

 ・複雑な問題の解き方は、シンプルな問題の解き方とは違う。

 ・シンプルな問題とは。論理的に分析すると問題と原因を特定できる。そして解決とは同定した問題と原因を取り除くこと。普遍的な解決策がベスト。担い手は専門家の解決策を専門家が実行する。

 ・複雑な問題とは、多様な要素と複数の文脈との相互作用。そして解決に向けたプロセスを考えると、分析だけでは問題と主原因を特定できない。大事なのは社会やコミュニティへの対応力を高めること。社会、地域、コミュニティごとに最適な解決策は違う。担い手はその場の構成員が相互作用を通して身に着ける。システムの対応力を高めていく。ケイパブルコミュニティソリューション(コミュニティの問題解決能力)

 ・自己責任を超える多層的な視点 問題を個人レベルだけで見ない。問題は多層的に発生している。アメリカの子どもの肥満。個人の努力 個人インディビデュアル→ ジャンクフードの存在 肥満の子どもには肥満の子どもが多い 家族インターパーソナル→オーガニゼイショナル→コミュニティ→社会ソーシャル アメリカで検討されている砂糖税。

 ・問いとは「視点」切り口「視野」範囲「視座」どの立場で見るのかで変わる。

 ・視座を柔軟に使い分けることが必要 担当者の立場、マネージャーの立場、経営者の立場、次世代の市場を作る立場、次世代の社会を作る立場、等々

 ・問いかけを考えるとはどういうことか。

 ・問うことは解くことよりも、その人の価値観、知識、経験、状況への向き合い方に大きく影響を受ける。

 ・批判力を鍛えることで問いの質も変わっていく。

 ・問いかけ 問う+声かけ・働きかけ 問いかけには自分と対象者との関係性、相手への感情が色濃く反映される。

 ・問いかけを考えるということは、自分の前提と行き先を考えること

 

Q&A

Q 経験学習の大事さの概念化はどのような心掛けの中で実現言出来るのか

A 自分の人生を振り返り、一つのエポックの意味をどうつけるのか。誰かに伝えることを想定してどのように伝えたら相手が理解できるか。他者が見えてこないと概念化は出来ない。今のうちからどんどんと仲間を作り、縁遠いと思う人が案外助けてくれる。それが概念化。

Q 問いが未来と現状のギャップで生まれるとすると、日常生活の問いとゼミに持ち込もうという問いの質はどちらが上か

A 案外問いを持っていても、それが無自覚である。

 船木さんがなぜこの問いを立てたか。船木さんのミッションは、いかにあまがさきを市民や他市紙の人たちにブランディングしていくか。市役所の人たちは自分の与えられた仕事を全うしようとしているけれども、そういう仕事の枠を超えて、市民や他地域の人たちがどのように尼崎に関心を持ってもらえるのか、それをスタバやディズニーランドを例えとして考えてみることで、考えてみる入り口を作りたいからではないか。

Q 最初に問いを立てるときリスクを比較して放置する。実践共同体の仕事の中で痛い目に合う

A ベテランになるときは、「いう空気でない」と考える。なぜ先輩たちはそういう考えに至ったのか、私の考えとずれていることは自分が未熟なのか、ベテラン=熟成ではない。よそ者、若者、馬鹿者 中に入ると「そういうもんだでない」「考えなしに動ける」「既存の枠組みの正しさに批判的な存在」変わってしまった自分と変わる前の自分。ワードカフェのような視点。新しい人に可能性がある。そういう人たちを大切にする風土がほしい。

Q 市民に話をするときに「わからない」ということで市民から「わからないことはプロでない」と問われる。

A 指導=自分の正しさ。自分の正しさと相手の正しさがある。わからないではなく、相手の正しさを理解しようという気持ちが大切。防災訓練の場合。その人にどんな正しさがあるのかな。人のつながりは思った以上にコスト。相手はどういうロジックで、どういう正しさがあって論じているのか。あなたのことをもっと理解したいという姿勢で接すれば、関係性を作ろうとすることも相手につながる。

文脈=コンテクスト 相手の気持ちに立って考えましょう。大人には難しい。相手の文脈を理解しましょうということ。

 

〇 広石さんかんらの補足

 「たった一つを変えるだけ」 ダンロスティン ルースサンタナ

 ・テーマを選ぶ

 ・できるだけたくさんの質問を作る

 ・できるだけたくさんの質問を作る

 ・出た質問を話し合ったり、評価したり、答えたりしない

 ・質問を詰まった人の発言をそのまま描く

 ・意見や主張を疑問文に直す

 ・閉じた質問←→開いた質問を書き換える

 ・質問に優先順位をつける(上位3つをつけるなど)

 ・優先順位の高い質問を使って計画する

 ・振り返る(気づいたこと、学んだこと)

 ・学習とは:転移型の知識ではなく、反転授業

 ・大事なのは調べたいという動機付け それが先生の仕事

 

 住民が安心して暮らしていける尼崎市を実現するについて問いをたくさん作ってみよう