社会教育研究集会「分科会:自治体改革と住民の学び」に参加しました

 8月27日(日)相模原女子大学キャンパスで行われた社会教育研究全国集会に参加してきました。

 今回は「自治体改革と住民の学び」という分科会の主催者から求められて発表をしてきましたが、地域課題の解決のために学ぶことが非常に大事なこと、そして市民と行政の協働の上で、自治体職員側の姿勢が大変大事であることを考えさせられる機会でしたので、共有する意味で概要を報告します。

〇 分科会「自治体改革と住民の学び」

 少子高齢人口減少社会の深化を背景とし、国は国内自治体の管理する公共施設のあり方にたいし、公共施設の将来計画策定の義務付けを行い、この事により多くの自治体で公民館などの社会教育施設も見直し対象とする動きが起こっています。

 この分科会は、この動きに対して、公共施設のあり方 を単に財政削減の視点ではなく、住民の暮らしや本当の意味での住民自治の実現、住民意思に基づいたプロセスによる改革等の視点で考えることをねらいとしています。

〇 飯田からの報告「自治の質量」

 私は東京大学の荻野亮吾さんと共同で、九州大学の八木信一さんを代表とする「自治の質量」に関わる飯田モデルをテーマとした報告を行いました。

 「自治の質量」は八木さんの考えた言葉で、団体自治と住民自治のバランスを差します。地方分権の動きの中で国は地方自治体への権限移譲など団体自治の拡充策を政策誘導してきたことにたいし、住民自治の拡充は地方の自主的な取り組みに専ら任せてきました。

 最近になって地域自主組織という概念を構築し、その組織形成をモデルとして支援する動きが広がっていますが、その動きの多くは自治体の人と予算を地域に渡してしまおうという傾向です。

 これに対し飯田市の場合、市内20地区に公民館と自治振興センターを残し、ここに人を配して住民自治と団体自治の橋渡しを行う仕組みとした点に特徴があります。

 このことにより公民館や自治振興センターに配置された職員が住民との協働力を学び、自治体全体が住民との信頼関係似基づいた、本当の意味での協働のまちづくりを行っていく姿を展望しています。

 そして本当の意味での協働が機能していれば「①まずそれぞれの地域で自治体財政による執行なしに地域の課題解決が行われ」「②地域の力だけでは解決できない課題が明らかとなり」「③本当に必要なところに自治体財政を投入することができ」「④このことにより健全な財政執行が可能となる」

 という仮説のもと調査を進めています。

 〇 茅ヶ崎市相模原市における社会教育行政の変化

 茅ヶ崎市相模原市は公民館の振興に力をいれ、そのことにより多くの市民が自治の担い手として育ってきた歴史があります。しかし近年公民館職員の減員や非正規化、公民館の有料化など、公民館政策の後退が見られます。このことを憂う市民からの報告でした。

 この報告をお聞きしてビックリしたことは、実は両市とも報告者は公民館かつどうで学んだことを力とし、現在市議会で活動している女性議員さんであることです。

〇 あなたの中のリーダーへ

 少し横道にそれますが、最近「あなたの中のリーダーへ」という本を読みました。

 私は4月から長野県教育委員会職員となり、公民館の振興などを仕事としています。5ヶ月間県内公民館を歩いてみて、長野県の公民館を建て直していくためには何よりも職員の力量強化につきると感じています。

 その中で現在上田市の公民館有志の皆さんと読書会を始めることになりました。チューターは私と同様4月より長野県の参与(部長級)となった船木成記さんです。そして船木さんから示されたテキストのひとつがこの本です。

 著者の西永美恵子さんは元世界銀行の副総裁を勤め、世界銀行を本当の意味での第三世界の貧困に寄り添う組織に作り上げた人です。

 西永さんは特に国民総幸福を国是とした先のブータン国王の生き方を一番のお手本とし、仕事と自分自身の生き方と、家族の幸せを統合的にとらえた生き方を貫いている人です。

 そこには何のために仕事をしているのかを常に自分自身だけでなく自分の関わる組織全体に問い続ける姿勢があります。

 自治体の仕事は住民の福祉の増進、何らかのハンデがあってもそのハンデを乗り越えて幸せを実現することを支える仕事です。

 戦後生まれの日本独特の社会教育機関である公民館は言うなればその最先端の仕事です。

 公民館の職員はまず自分自身の仕事の意味を改めて問い直すとともに、公民館の職員として、仲間である他の職場の自治体職員全体にその事を問うていくことが必要ではないのでしょうか。