地域ぐるみで子供を育てるフォーラムに参加しました 2017年8月29日

 8月29日(火)諏訪市文化センターにて「地域ぐるみで子どもを育てるフォーラム」が行われました。主催は南信教育事務所で、諏訪及び上伊那地域の社会教育・学校教育関係者の皆さん150人が集いました。

 前半は3人の実践者によるパネルディスカッション、後半は7つの分科会で構成されています。

〇 子どもたちを育てる地域の力と、子どもの育ちから学ぶ地域の大人たち

 パネルディスカッションのコーディネータは南信教育事務所指導主事の林尚之さん、パネリストは宮田村立宮田中学校教頭の土橋浩一郎さん、富士見町教育委員会子ども課地域連携推進支援幹の伊藤恵子さん、諏訪市四賀地区しがっ子クラブ事務局長で県社会教育委員連絡協議会長も務める小池玲子さんです。

〇 村と商工会が支える、キャリア教育「プラムデー」で育つ中学生たち

 宮田中学校は、総合的な学習の時間を「プラムデー」と名付け、村役場と商工会が全面的に協力し、子どもたちのキャリア教育に取組んでいます。

 1年生は「宮田村を知る」、2年生は「宮田村で体験する」をテーマに、「村政」「農業」「製造業」「特産品」「福祉」「環境・歴史」という6つのテーマを学びます。1年生はテーマごとに地域の方たちが講師となった学習、2年生は村内の様々な事業所での職場体験を行います。そして3年生は「よりよくしよう宮田村」をテーマに、2年間の学習成果を活かし行動します。

 昨年度の場合は、修学旅行ではグループごとに宮田村を紹介するパンフレットを作成し、京都駅でPR活動をしました。そして2年間の学習成果を活かして村のよいところをまとめた「宮田かるたづくり」、地元の豆腐など特産品を使った「Mcバーガーの開発」、空き店舗を喫茶店とした商店街活性化などに取組みました。そしてそれらの学習成果を活かしてこども議会で「自然」「伝統文化」「食」「施設」グループごとに村活性化に向けての提案を行いました。そして議会で「宮田かるた」や「Mcバーガー」の商品化を提案したところ、村の予算での商品化につながりました。

〇 地域もはつらつ!子どもささえたい

 富士見町では「地域もはつらつ!子どもささえたい」を合言葉に、幼保小中高まで一貫して地域で子どもたちを育てる取組みを進めています。

 それぞれの機関ごとに多彩な形で地域の中で子どもを育てる活動を進めるとともに、富士見中学校では支援ボランティアの手で学力を高めるために「夕学」にも取り組んでいます。

 そしてこれら活動の実際やねらいを学校・地域・保護者が共有するために「ほっと!ホット!」という通信を発行しています。「ほっとする」「ホット(最新の)」を意味するそうです。

〇 ねらいは「四賀で育ってよかった(子どもたち)」「四賀で子育てできてよかった(親)」「四賀で暮らせてよかった(お年寄り・地域の方たち)」魅力ある地域にするために

 諏訪市四賀地区では平成10年「四賀地区の子どもと教育を語る会」を開催したことをきっかけに、「しがっ子クラブ」が誕生しました。

 会の目的は次の通りです。

 「子どもたちが豊かな人間性・完成・社会性などを養い、21世紀に地域とともに自らが生きていくことを育むことを目的とし、子どもたちがスタッフ・大人の援助を受けながら、四賀という地域を接点に年代・環境の違う人たちと一緒に活動し、計画を立て実行することを通して、辞書的に活動できる子供の育成を目指す」

 月2回の土曜日が活動日で、高学年の子どもたちとスタッフが活動を企画立案します。「上川河川愛護活動」「僕ら上川探検隊(いかだを作って上川を下ったり水生動植物の観察会)」「葦船プロジェクト(上川の葦を使った船造り)」「里山体験活動」「技や知恵に触れ、自ら作り出すことの喜びを育む活動(ものづくり、日お越し)」「地域探検・ハザードマップ作り」など活動は多彩です。

 何よりも子どもたちの発想を大事にした取組みであることが特徴的です。

  3人の皆さんの発言で印象に残ったことを紹介します。

〇 子どもの育ちから

 「地域の人たちは認め上手で、一人ひとりの子どもたちに応じたアドバイスをしてくれます。また夕学の学習ボランティアから子どもたちは、学ぶ姿勢や人としての生き方までも学んでいます。そして先生たちも地域の方たちから学びそのことが子どもたちにも良い影響を与えてくれています。」(富士見町伊藤さん)

 「多世代の人たちとどのように接するのかということが子どもたちにとっての大事な学びです。そして活動の企画や運営を任されている高学年が低学年の子どもたちを教えることで、活動がつながっています。地域の人たちはほめ上手、家族や先生以外の人たちからほめられる経験とともに、叱られる経験も大切です。そういう大人たちとのふれあいを通して子どもたちは、自分たちの将来の姿が見えてきます。」(しがっ子クラブ小池さん)

 「MCバーガーの開発、宮田かるたづくり、喫茶店の運営などの活動を進めようとすると解決しなければならない課題だらけです。そういう課題を克服することで生徒たちは力をつけていきます。将来は宮田村を愛し、宮田村を創造する力をつけた生徒たちを育てたいと考えています。」(宮田中土橋さん)

〇 子どもと教師と地域がどう変わったか

 「地域と学校が子どもたちの状況を把握して、子どもたちに伸ばしたい姿を話し合い、子どものありたい姿を共有し、そのうえで教師や地域の人たちが役割分担していくことが大事です。活動を通して子どもたちは大人たちの後ろ姿から学ぶとともに、大人たちは子どもたちの育ちから逆に学んでいます。」(富士見町伊藤さん)

 「諏訪地域は災害の多い地域です。東日本大震災でも災害は下校時に起きましたが、学校や地域の防災訓練では登下校時の対処が想定されていません。そういう時に子どもたちは通学路の中で一番近い安全な場所に避難することが必要です。そのためには地域と学校が連携し、一人ひとりの子どもたちが自分の避難する場所を招致するとともに、地域側でもいざというときの受け入れの備えを作ることが必要です。地域とともに生きるためにコミュニティスクールは必要です。」(しがっ子クラブ小池さん)

 「宮田村ではキャリア教育がステップアップしつつあります。それは学校、地域と企業が育てたい力を共有できつつあるからです。村のキャリア教育では、地元企業の強みや可能性を大切に、地域の側では生徒他の思いを受け止めることを大切にしています。今年の3年生は『エコバック みやさん』の商品化を考えていますが、地元企業の細田染色さんが全面的に協力していただき、大量生産の体制を整えていただいています。地域の方たちが理解協力してくれることで、子どもたちは無理なく、楽しみながらそういう取組みに関わっています。」(宮田中土橋さん)

〇 自分自身が一番の学び手として

 「子どもたちの様々な課題の存在についてまず私自身が学び、そしてそのことを皆で共有し、子どもたちの笑顔のために、皆で汗を流し、そして地域の人たち同士が寄り添い共に支えあい、ともに育ちあい様な社会づくりをこれからも進めていきたいと考えています。」(しがっ子クラブ小池さん)

 「自分がこれまで培ってきた生き方を総動員して仕事に取組んでいます。その中で私自身も人とのつながりが広がり、地域の人たちとの信頼が生まれ、子どもたちを育てる取組みを通して、富士見町という地域全体が育っていると感じています。」(富士見町伊藤さん)

〇 地域と学校の連携の今

 長野県教育委員会では信州型コミュニティスクールの導入を県内小中学校に行っていますが、今回のフォーラムをはじめとして、各地域で動いている実践をお聞きすると、次世代の地域の担い手である子どもたちを地域と学校が連携して育てようとする取り組みは、内実の深まりを伴いながら広がっていると感じています。

 子どもの育ちが入口となり、教師や地域の大人たちが学び、地域全体が代わっていく姿が、各地区で起こりつつあることがわかります。

〇 高校生たちも育っています~富士活娘

 後半の分科会は、「地域づくりに関わる高校生の取組み」に参加しました。富士見高校では3年前に一人の女子生徒が立ち上げた「富士活娘」というグループが町の活性化の取組みを進めています。これは地域の要請ではなく、学校のクラブ活動でもなく、生徒有志に寄る取組みであることが特徴です。

 活動の柱は「ルバンビー」というゆるきゃらと、地元の特産野菜ルバーブを材料とした「高原の味ルバーブさわやかカレー」の開発です。地元食堂の協力を受けながら、このカレーでB1グランプリに参加することが目標です。

 活動の発端は一人の女子生徒がシャッターのしまった商店街を何とかしたいという思いから生まれました。

 現在の代表の菊池柚芽さんはカレーの開発を進めるときに「おいしかった」とほめてくれる大人たち以上に、プロの飲食店の方たちからの改善の提案がうれしかったといいます。

 富士見高校の先生からは、地域に出ていき、いろいろな人たちと出会い、時には厳しい意見を受け止めながら、そのことが商品間発に生かされる事実を通して感謝の気持ちにつながりながら育っている、という話をしていただきました。そしてこういう体験を高校生のうちにできることで、世の中に出ても負けない人として育つととらえています。

 私は飯田市公民館時代、飯田OIDE長姫高校地域人教育や高校生講座カンボジアスタディツアーなど、高校生たちの育ちの場面に関わってきましたが、進学・就職という人生の最初の大きな岐路に立ち彼らにとって高校時代は大変大事な時期であり、また地域や大人たちとの出会いや、高校生自らが主体となる場面があることで、大人たちが思う以上に育っていくのだということを実感しています。

 高校生と地域を結ぶ取り組みは大事であることを改めて実感することができました。