飯田市で船木成記さんを講師に、インナーブランディングをテーマとした研修会が行われました

 8月31日(木)、飯田市松尾公民館で、飯田市自治振興センター・公民館職員を対象とした研修会が行われ参加しました。

 講師は長野県参与の船木成記さんで、長野県が取り組みを進めていく「しあわせ信州」の趣旨と重なることから、この取り組みの根幹となる考え方である「インナーブランディング」をテーマとした研修会となりました。

 長野県総合計画や教育振興基本計画の柱となる「学びの県」を考えるうえでも大変参考になり、また、「学びの県」の取組みを教育行政以外の部局に広げていくうえでの考え方の整理にもなる講義でしたので、以下の通り概要を報告します。

〇 田舎へ還ろう戦略とインナーブランディング

 飯田市は今年からスタートした総合計画の柱のひとつとして「田舎へ還ろう」を掲げ、市内20地区ごとに自治振興センター・公民館職員が事務局となり、住民との協働でUIターン者の獲得に取り組みます。

 今回の研修は、この取り組みを進めるための職員の意識作りをねらいとして開催されました。

 講師は長野県参与で信州総合ブランディングを担当する船木成記さんです。

 テーマは「田舎へ還ろう戦略とインナーブランディング~チーム・センターの役割について」

 長野県でも持続可能な地域づくりを進める一貫として「楽園信州・移住推進室」を設け、取り組みを進めており、共通の課題であることから室長の丹羽克寿さんも参加しました。

〇 ブランディングとは

 ブランドの語源は家畜の牛などへの焼印、つまり識別記号。この言葉にingが加えると、ブランドをつくり続けるという意味になります。そのことによりブランドに愛着やロイヤリティが付加されていきます。

〇 インナーブランディングとは

 ひとつのものがブランディングされて魅力的なものとなるためにはその前に、ブランディングに取り組む側の人たちが、自分たちのアイデアや目指すものを、自分たち自身で発見、確認、共有することが必要です。

 船木さんはこのことを分かりやすく示すために「まんじゅう理論を」例えにします。つまりまんじゅうの本当の美味しさは外側から見た皮だけでなく、外から見えないあんこの部分にあるということです。

 田舎へ還ろうと結びつけると、飯田の町が魅力的で移住してみたい町としてブランディングされているということは、そこに暮らす人が、町を愛し生き生きと暮らしていることが大切であるということがインナーブランディングです。

 〇 イメージとアイデンティティ

 イメージとは過去から積み上げたものの延長線です。これに対してアイデンティティとは自分たちがこうありたいと願う=ビジョンにつながるもの。そしてこれから進むべき方向を示し、その方向に向かって行動することです。そう考えるとアイデンティティとは、一つのプロジェクトに取組むメンバーが共有しなければならない視点です。

 〇 人口問題ではなく人生問題

 2月に行われた飯田市公民館大会の基調講演で藤山浩さんは、飯田市が取り組む田舎へ還ろうの元となった「田園回帰1%戦略」を進めるときの大事な視点として「人口問題ではなく人生問題」と話してくれました。

 今日の会議の冒頭でも飯田市の人口戦略として、年あたり420人のUIターンが必要という計画が示されました。行政は数で考えようとする傾向があります。

 しかし田舎へ還ろうの取り組みは飯田へ暮らすと決めた人一人ひとりの人生を預かるということです。

 一緒に地域を作っていくメンバーを募集するということです。相手は自分の人生をかけて移住してくるわけです。そういう人と同じ熱量で地域の側が受け止めることができるかということです。

 〇 田舎へ還ろうとインナーブランディング

 田舎へ還ろうを進めるときに必要なインナーブランディングは、移住先として飯田を選ぼうとする人たちが飯田で出会う一人ひとりが、ぶれていない姿勢や発言で応対してくれるかどうかということです。地域側がそういう一体感を持つことができるかどうかということです。

 そのことによって、この地域や人を信頼できると判断し、自分の人生を預けたいと信頼してくれることに繋がります。

 〇 チーム・センターとして

 自治振興センター・公民館の職員にはそれぞれ異なる役割をもって仕事を進めています。その一人ひとりが目的を共有し、それぞれの担当領域を共通の目的に向かって重ねいくことが必要です。

 例えば保健師の仕事は予防原則に沿って地域に暮らす人たちの健康の状況を診断する仕事でもあります。公民館主事は専門委員や分館役員など多彩な世代や職業の人たちとつながることで地域に関わる様々な人や情報をつかんでいます。

 これらセンター職員がチームとして田舎へ還ろうを各地区で住民の皆さんが主体となって取り組んでいくときのエンジンとなっていくことが必要です。

 〇 佐藤副市長から

 研修会の最後の佐藤副市長の言葉を紹介します。

 チーム・センターという言葉は私にとってチーム・市役所という言葉に置き換えて考えていきたいと思います。

 人口問題ではなく人生問題など、船木さんの言葉はどれも大変大事だけれど、同時にすごく難しいことでもあると思います。しかしこの言葉を受けとめて田舎へ還ろうの取り組みを進めていくことが必要です。

 外からの移住者を獲得する前に、高校を卒業したあと8割の若者がいったん飯田を離れこのうち2割しか戻ってこないという現状をもう何割か上げていくという取り組みを進めることが必要です。

 そのためにもインナーブランディングの取り組みが大事です。