ボランティアコーディネート力検定研修会に参加しました 2017年9月24日

 9月24日(日)塩尻市で行われたボランティアコーディネーション力検定講習会に参加しました。

 〇 ボランティアコーディネーション検定力講習会について

 主催は長野県社会福祉協議会と、NPO法人ボランティアコーディネーター協会です。 

 この講習会に参加した動機は、4月に長野市に赴任してから出会う方たちの中に、公民館主事のお手本のような活動や姿勢を持つ方たちに良く出会ったことにあります。特に来年3月3日(土)、4日(日)に長野市で開催される全国ボランティアコーディネーター研究集会の実行委員となり、出会った県内実行委員の皆さん一人ひとりが大変バイタリティがあり魅力的な方々で、ボランティアコーディネートと公民館主事の仕事に強い親和性を感じています。

 今回検定講習会に参加したのは、具体的にボランティアコーディネート力がどのようなものなのかを知ることがねらいです。

 講習会講師の筒井のり子さんは竜谷大学教授、日本NPOセンター代表理事の早瀬昇さんとともに検定講習会のテキストでもある「ボランティアコーディネーション力(中央法規)」を執筆されています。筒井さんご自身は学生時代からボランティアサークルの運営に関わり、1995年の阪神淡路大震災では仲間たちと多くのボランティアと被災現場をつなぐ活動をされた経験を持たれています。

 ボランティアコーディネーターというと福祉分野の仕事ととらえられがちですが、ボランタリーな市民活動の現場や、行政や企業とボランティアを結ぶ場面など多彩な役割のある活動です。

 ボランティアコーディネーター協会は、市民が主役の地域や社会づくりを進めようという志を持つ人たちにより設立され、同じ考え方や力量を持つ人たちを広げていくことをねらって設けられたのが「ボランティアコーディネーション力検定」です。現在3級が3,655人、2級が463人、1級が70人登録されています。3級試験は5時間の事前研修と筆記試験、2級はボランティアコーディネートの経験を持つことが条件で、2日間の事前研修と筆記試験が必要です。ただし資格ではなく、検定試験の受験は、自分自身のコーディネーション力を高めることが目的です。

〇 ボランティアコーディネーターの歴史

 ボランティアコーディネーターという役割が紹介され、その必要性が論じ始められたのは1970年代、1976年日本で初めてのコーディネーター講座は大阪ボランティア協会が開講しました。 1980年代はボランティア及びボランティアセンターへの過剰な期待が高まることに対して、専門性が模索され始めました。そして1990年代後半、阪神・淡路大震災の経験から、ボランティアコーディネーターの存在と、その必要性への理解が広がるとともに、社会福祉生涯学習の分野で、ボランティアコーディネーターの研修体系づくりが進められるようになりました。そして1998年特定非営利活動法人法が成立し、地域や社会の課題解決を自らが主体となって進める市民活動の広がりを受けて、2001年ボランティアコーディネーター協会は設立されました

〇 ボランティアコーディネーター基本指針~求める価値と果たすべき役割

 ボランティアコーディネーターについて、その社会的認知が広がらない、組織の中でその役割が理解されず位置づけがあいまいであるという課題に対し、専門性の中身を分かりやすい言葉で明文化しようと、2004年、環境、福祉、教育など様々な分野で活動するコーディネーターが一堂に会し話し合いの中からまとめられたのが「ボランティアコーディネーター基本指針~求める価値と果たすべき役割」です。

 基本指針は「どのような社会を目指すのか」「どのようにボランティアをとらえるのか」「どのようにボランティアと向き合うのか」「どのようなボランティアコーディネーションを行うのか」という4つの視点で構成されています。

〇 どのような社会を目指すのか

 「一人ひとりが、自由な意見・自分らしい生き方が尊重される社会」

 「一人ひとりが自分の力を活かせる社会」

 「一人ひとりが弱さを分かち合える社会」

 「一人ひとりが役割を持ち対等な関係で働ける社会」

 「多様な文化を認め合えるグローバルな社会」

 「人々が協働して社会の課題に取組む社会」

 「人々が自由に社会づくりに参画できる社会」

 「結果のみでなく、決めるプロセスを大切にする社会」

 「公立のみを優先させるのではなく、豊かな人間関係を作り出す社会」

 「自然環境を守り、命を受け継ぐことのできる持続可能な社会」

 〇 どのようにボランティアをとらえるのか

 ボランティアは

 「市民社会を構成する担い手である」

 「自分の意志で始める」

 「自分の関心のある活動を自由に選べる」

 「活動に対して責任を持ちその役割を果たす」

 「共感を活動のエネルギーにする」

 「金銭によらないやりがいと成果を求める」

 「活動を通して自らの新たな役割を見出す」

 「活動を通して異なる社会の文化を理解する」

 「活動に新しい視点や提案を示し行動する」

 「安価な労働力ではなく、無限の創造力である」

 〇 どのようにボランティアと向き合うのか

 「ボランティアの意志を確認し、希望を尊重する」

 「ボランティアひとりひとりの経験や関心、活動動悸を尊重する」

 「ボランティアひとりひとりの中にある力や可能性を信じる」

 「ボランティアに共感する気持ちを伝える」

 「ボランティアの多様な意見や考え方を受容し、活かす姿勢を持つ」

 「ボランティアとコーディネーターは対等であるという自覚を持つ」

 「ボランティアとコーディネーターの役割の違いを認識する」

 「豊富な情報、社会資源のネットワークを用意しておく」

 「ボランティアが新たな課題や活動に挑戦することを応援する」

 「ボランティアと課題を共有し、ともに考える姿勢を持つ」

 

〇 どのようなボランティアディネーションを行うのか

 「ボランティアが活動を通して市民として成熟していくプロセスを大切にし、それを支える」

 「ボランティアの動機やニーズ、得意分野などをていねいに聴き、活動の選択に役立つ情報や資源を提供する」

 「ボランティアコーディネーター自身がビジョンや社会観を持ち、ボランティアや関係者に対して分かりやすく発信する」

 「人と人、人と組織を対等につなぎ、一方的な人間関係や上下関係などが生じないように調整を図る」

 「ボランティアの力が活かされるような環境を作り、活動への意欲が高まるよう工夫する」

 「個々の活動、それぞれの団体の発展にとどまらず、他者と協働する意義に着目し、ネットワークづくりを推進する」

 「ボランティア同士が問題意識を共有する場を作り、双方向の議論によって互いに学びあい、あらたな課題の発見につなげる」

 「ボランティアを社会づくりや組織活動・運営の重要な構成員として認識し、活動の企画や実施、評価に参加できる仕組みを作る」

 「ボランティアの問題提起や提案を広く受け止め、解決に向けてともに活動(プログラム)を開発する」

 「困難な課題を社会に開き、多様な人々が出会い、話し合う場をつくることによって、より良い社会の創造に向かう」

 

〇 公民館主事に置き換えてみる

 上記の指針のうちボランティアを「住民」、ボランティアコーディネーターを「公民館主事」に置き換えてみると、多くの表現がそのままあてはまるととらえました。

 ただし、飯田型公民館のように公民館の運営の主体が住民であり、公民館が住民自治の担い手として育つ場、ととらえると、ボランティアという概念とは少しずれがあるようにとらえています。とはいえ、自発性や社会性を大事にするという姿勢は共通しています。

 また自治体や企業の組織運営にも共通する指摘が多くあります。その意味ではボランティアコーディネーターという仕事分野にとどまらずに、多くの人たちが学ぶ価値のある内容であるととらえました。

〇 まずは実践、そして振り返りの機会として

 今回の研修を受けて感じたのは、まずは自分自身がコーディネーター役としての実践を重ねていることが大事であり、そういう実践を重ねれば重ねるほど、この研修が振り返りの場として有意義になるということです。

 現在、次年度に向けて公民館主事の力量を高めるための研修プログラムを立案中ですが、ぜひボランティアコーディネーターとのつながりを模索していきたいと思います。