信州学サミット~信州・学びの旅に出ように参加しました 2017年10月21日

〇 信州学サミット~信州・学びの旅に出よう

 

 10月21日(土)JR長野駅で「信州学サミット~信州・学びの旅に出よう」が開催されました。

 信州学とは県内すべての高校生たちが、自分たちが生まれ育った信州というアイデンティティを持って自分たちの進路を考えてもらいたいと、長野県教育委員会が提唱している取組です。

 平成27年度には「私たちの信州学」というテキストもできました。信州学は特定の教科ではなく、各学校の教育課程の中で創意工夫して取り入れることとなっていますが、職業高校では課題研究の時間、普通高校では総合的な学習の時間に取り入れられることが多いようです。

 平成24年度から取り組んでいる飯田OIDE長姫高校の地域人教育は言うなれば信州学の先駆けとなる取組と言えます。

 

〇 オープニングパネルディスカッション

 

 この日は長野駅コンコースでの信州学に取り組む各高校のボスターセッションや、長野駅に隣接したMIDORI長野りんごのひろばが会場となった信州学に取り組む10校の実践発表のほか、オープニングパネルディスカッションが行われ、私もパネラーとして参加しました。

 進行役は教学指導課の柳沢忠男さん、パネラーは私の他に信州学推進委員会推進委員長で信州大学教授の石澤孝さん県立長野図書館の長の平賀研也さん北部高校校長の市川裕子さん飯田OIDE長姫高校3年の宮澤芽生さんが登壇しました。

 印象的な発言を紹介します。

 

 ▽ 問題解決と課題解決の違い~平賀研也さん

 

 信州学を通して郷土愛や社会生活を送るための様々なスキルが身に付いていくというのも大切なことですが、それ以上に大切なのは自分が未来にこうありたいと言う生き方ビジョンをつくることです。そのためには問題ではなく課題に向き合うという姿勢が大切です。

 ここでいう問題とは試験問題を解くというような今目の前のことに対処するというような意味で、これにたいして課題とは、組織の目指している目標を達成するというような、未来やビジョンに向き合うという意味ととらえました。

 

 ▽ 教科書にある人ではなく、ちまたで素敵な生き方をしている人たちの存在に気づいていきたい~市川裕子さん

 

 北部高校の信州学の取組では、地域の方たちに大変お世話になっているけれど、たとえば地域の伝統食を若い世代に伝えていこうと活動している「だんどりの会」の宮本久子さんのような、ちまたで素敵な生き方をされている人、あるいはされていた人たちの存在を、生徒たちに気づいてもらいたいと思います。

 そのためにはまずは先生自身の姿勢が試されます。

 

 ▽ 大人たちに気づいてほしい、昔と今の高校生の違い~宮澤芽生さん

 

 地域人教育の取組を通して、今日のような場でもいろいろな質問にたいして自分の言葉で答えられることができるようになったり、地域の大人の人とのつながりがたくさん生まれたり、自分自身が変わってきたなと感じています。

 こういう経験は本当は高校になる前から積み重ねていくことができるとができるともっとよいと思います。大人の人たちにはもっと小中学生時代から、地域人教育のような経験を子どもたちにしてあげられるようなことを考えてほしいと思います。

 

 ▽ 比べてみる鏡が大切

 

 以下は当日の私からのメッセージです。

 参加された高校生にとって、自分たちの暮らしている信州の良さを知るためには、自分の住んでいる地域のことをしっかり調べることにあわせて、それ以外の地域のことを知ることを通して、それを鏡として振り返ってみる経験も大事です。

 飯田市の公民館で行っている「高校生講座カンボジアスタディツアー」のねらいもそこにあります。

  地域の先に社会を見ること

 

 明日の衆議院選挙に向けて飯田下伊那の高校生有志が、高校生たちの投票率を100%にしようと「飯田下伊那高校生100%計画」というグループを作り頑張っています。

 youtubeで長野4区に立候補した3人の候補者に高校生たちが一時間を越えるインタビューをしていますが、それを見て高校生たちの意識の高さに感動しました。

 この取組のそもそもは、飯田OIDE長姫高校のsturdy eggやカンボジアスタディツアーに参加した高校生たちのつながりから始まった取組です。

 地域を学ぶことの先にぜひ、広く社会のことを考えることができるような視野を広げてください。

  かっこいい大人、仲間、誰かの役に立つ、ふりかえり

 

 信州学の取組で大事にしてほしいのは4つ。

 一つ目は、かっこいい大人の人たちとたくさん出会い、そういう人たちの生き方から学ぶこと。

 二つ目は、そういう取組を一人でするのではなく、取組のなかで、心を許して話のできる仲間を作っていくこと。

 三つ目は、誰かの役に立つ活動をすること。

 四つ目は今日のような自分たちの活動を皆に伝える機会を大事にし、そういう機会に自分たちの活動を振り替える機会をつくること。

  大人はまず大人みがきから

 

 先生を含めて高校生の学びに関わる大人たちは、高校生たちに何かやらせようとする前に、自分自身が高校生のお手本となる生き方ができているか、まず自分磨きをすることが必要です。これは自分自身のことも含めてです。

  高校生たちの発表も素晴らしかったです。

 

 特にOIDE の生徒の皆さんの発表は、自分の言葉で、相手に伝わる話し方もできており心に残りましたが、他の高校生たちの発表もとても素晴らしかったです。

  

〇 先生の意識変革

 

 事例発表団体の一つ、長野高校の担当の先生と話をする機会があり、いくつか質問しました。

 長野高校は「ジェンダー」についての研究発表をしたのですが、進行役の柳沢先生から生徒に対して「この研究をしたことが自分の進路に影響を与えたか」という問いに対して「ない」と答えていました。その生徒は男子生徒なのですが、発表の中でも、ジェンダーの問題に対して自分はどう考えるのか、という考えは披露されていませんでした。先生と話をして感じたのは、あくまで信州学は、探究的な学び型の実習の場ととらえているとのこと。また、進学のための学習と総合的な学習の場で行う信州学は切り分けて考えているとのことでした。

 信州学の本質は、学習の手法ではなく、生徒自身が信州学を通して、自らの生き方の糧にしていくこと、そう考えると先生たちの指導は到底そこに及んでいないということを強く感じました。

 信州学を進めていくための課題は、信州学のねらいをしっかりと把握して、そういう指導ができるような教員の意識変革と力量強化にあるととらえました。

 

〇 地域側の支える仕組み

 

 高校生の事例発表の多くは、それぞれの高校の位置する地域の自然や歴史などの特徴紹介に終わっており、肝心の地域で暮らしを営む人の姿が見えてきません

 信州学にとって最も大事な学習の要素は、生徒たちにとって魅力的な大人たちとの出会いととらえています。これは高校の教育にとっての弱みであり、飯田OIDE長姫高校や北部高校のように地域の側で、高校生たちと地域の魅力ある大人たちをつなぐ働きかけができる仕組みづくりが必要であると感じました。

 公民館や社会福祉協議会のように地域と密着した機関が高校と協力し、この取り組みを通して地域と生徒を結び付けていくような仕組みづくりが課題ととらえました。