飯田OIDE長姫高校1年生のフィールドスタディの講師を務めました 2017年12月4日

〇 飯田OIDE地域人教育

 12月4日(月)飯田市公民館で飯田OIDE長姫高校1年生によるフィールドスタディための学習会が行われました。

 飯田OIDE長姫高校では平成24年度から、松本大学飯田市とパートナーシップ協定を結び、商業科の生徒を対象に「地域を愛し、地域を学び、地域に貢献する人材」を育てる「地域人教育」に取組んでいます。地域人教育は1年生から3年生にかけての280時間の教育課程で構成されていますが、このうち1年生は「地域を知る」をテーマとし、これまで松本大学のサポートで、松本市の上土町に出かけ、地域調査の方法について学ぶなどの学習に取り組んできました。

 本日と翌5日は、飯田市中心市街地をフィールドに「中心市街地の課題」をテーマに、グループでお店の方たちへのインタビューを行い、まとめを行います。

 調査に先立ち、私は、中心市街地のまちづくりをテーマとした講義を担当しました。

 

〇 講義の概要

 講義の概要は次の通りです。

 ▽ 商業は生産者と消費者を結ぶ仕事

 商業とは生産者と消費者を結ぶ仕事です。そう考えると、生産者や消費者の置かれた地域の状況をまず知ることから始めることが大切です。

 例えば遠山郷では食料品や生活用品を車に積んで売り歩く「移動販売」が行われています。遠山郷飯田市の半分の面積の中に、10万人の飯田市の人口の2%、2,000人しか住んでいません。そして65歳以上の高齢の方たちの割合が50%を超えています。そのため特に高齢の方にとっては気軽にお店に買い物に出かけることは出来ません。そこでお店から高齢の方たちが住んでいる場所に出かける「移動販売」という商業が生まれました。

 ▽ 古来山河の秀でたる 国は偉人のある習い

 これは県歌「信濃の国」6番の一節です。長野県は3つのアルプスに囲まれた、暮らしを営むにはなかなか厳しい地域がおおあります。こういう厳しい条件を克服しようとする努力の中で、偉人が生まれてきたのが長野県である。そういう意味で解釈しています。

 飯田の地も同様で、そういう厳しい自然条件の中で、先人たちは自らの力で課題を克服する生き方をしてきました。

 ▽ 上久堅の取組を例に

 その例を飯田の上久堅の例で紹介します。

 上久堅地区は飯田の中でも少子高齢人口減少の進む地域です。子どもの減少の原因の一つは子育ての環境です。

 地域の人たちは子育て環境のうち、上久堅保育園に延長保育を導入するために、飯田市と交渉し、小学生の学童保育と保育園の延長保育を合体した制度を創設し、延長保育の費用の一部を地元で負担することとしました。そしてその費用の一部をねん出するために、地域の有志が「子育て支援の会」をつくり、会員の積み立てで延長保育の費用だけでなく、保育園や小学校に入園する家庭へのお祝い金を届けたり、保育園や小学校に必要な備品の助成などを行っています。

 こういう取り組みを進めることで、上久堅は子育て環境の良い場所であるという雰囲気が生まれ、このことも理由の一つとなり、IUターンの人たちが選んでくれるようになりました。

 このように飯田の人たちは、自分たちの地域の課題を、自分たちで解決しようという、熱心なまちづくりの取組を行っています。

 ▽ 飯田の中心市街地のまちづくり

 飯田に限らず、日本各地の地方都市で中心市街地は衰退しています。これはモータリゼイションにより郊外にロードサイド店が展開したことが一番の理由です。

 その中で、飯田の中心市街地はその衰退に歯止めをかけるため、まちに住む人たち自らが「飯田まちづくりカンパニー」というまちづくりの会社をつくり、取組を進めています。

 他地域の中心市街地活性化の良くある取組は、大きな商業施設をまち中に誘致することですが、飯田の場合は、まちにもう一度住もうという提案を行ったことです。これを「まち中居住」といいますが、この言葉は飯田で生まれ、全国の中心市街地活性化の取組に広がった言葉です。

 実際中心市街地には分譲型のマンションが3棟生まれ、その周りに住まうために必要な商業施設が整備されています。最近では高齢になってから便利なまち中ですもうと、高齢者専用の住宅などもつくられています。

 飯田の中心市街地活性化の取組でもう一つ大事なのは、まち中で楽しく暮らすことができるために「文化」を発信する取り組みを進めていることです。その取り組みの中心は、イイダ・ウェーブという団体で、ミュージック・ウェーブ、シネマ・ウェーブ、ランナーズ・ウェーブ、サイクリング・ウェーブ、野菜ウェーブ、ワカモノ・ビジネス・ウェーブなど、多彩な文化を発信する取り組みが広がっています。

 まちの中で、自分たちの力でまちをよくしようという、かっこいい大人の人たちにたくさんであったください。

 ▽ まちの課題を考える

 私の話の後に、イイダウェーブやりんご並木まちづくりネットワークのコーディネータを務める桑原利彦さんの講義を受けてから、1年生たちは地域に出かけていきました。

 テーマは「まちの課題を考える」、先生方があらかじめ商店街の方たちに高校生たちがまち歩きをすることを案内し、高校生たちの質問を受け止めていただくよう、お願いをしてあるそうです。

 最近は飯田OIDE長姫高校で地域人教育を学びたいと進学してくる生徒たちも生まれているようです。今日明日にかけての生徒の皆さんのまとめが楽しみです。