飯田市千代地区、田舎へ還ろう戦略作成に向けた会議に参加しました 2017年8月1日

8月1日(火)飯田市千代公民館にて、千代自治振興センター職員を中心とした「千代地区田舎へ還ろう」戦略作成に向けた話し合いに参加してきました。

 〇 「田舎に還ろう」職員会議

 飯田市では本年度スタートした総合計画の中で、市内20地区ごとに少子高齢人口減少に対応した「田舎に還ろう」戦略を、各自治振興センターが事務局となり、地域住民の話し合いにより策定・実行するための準備を進めています。

 そのための最初の会議が、地域住民の話し合いを支える各自治振興センター職員による会議です。

 自治振興センターには自治振興センター長の他に公民館主事、地区担当保健師、複数の窓口職員が在籍していますが、すべての職員が地区まちづくり委員会専門委員会の事務局を務めています。しかしこれまで公民館主事以外の職員の多くは、行政とまちづくり委員会の連絡役にとどまっており、住民主体のまちづくりを支えるコーディネータ、ファシリテータとしての役割を担い姿勢や力量が備わっていませんでした。

 そこでそういう姿勢や力量をつけるための研修を行いつつ、自治振興センターが一つのチームとして「田舎に還ろう」の取組みを支える試みを始めることとなり、20の地区ごとにそのための会議が始まりましたが、このうち千代地区の最初の会議に、自治の質量についての研究を進めている九州大学の八木信一教授とともに参加しました。

 〇 参加の顔ぶれ

 通常職員会議は自治振興センター職員のみで行われますが、千代地区の場合は、前年度農業課が主管となった「農ある暮らしPJ」に取組み、PJメンバーである産業支援課、企画課、IIDAブランド推進課も参加する大掛かりな会議となりました。

 〇 地区別人口分析

 飯田市では、3月まで島根県中山間地研究センターの総合政策監を務められていた藤山浩氏の指導の下、地区別人口動態に基づき2045年までの人口シュミレーションが行われています。飯田市全体では30年後このままのなりゆきでは現行の10万3千人から7万5千人と32%と大幅な人口減が予測されています。「田舎に還ろう」戦略は、30年後の人口を9万1千人までの減少にとどめるために、その取組みを20の地区ごとに目標人口を定めて取り組もうとするものです。

 ちなみに千代地区の場合は2015年の人口1,693人を成り行きでは875人と48.3%の減少が予測されるのに対して、それを食い止めるためには毎年、子連れUターン世帯2.5組、若者IUターン2.5組、定年IUターン2.5組の獲得が必要であるという計算です。

 このための取組みをどのように進めていくか、そのための最初の話し合いの場が今回です。

 〇 特徴的な意見

 「検診などで地区の人たちと話をしても、60代の方たちが元気である。この方たちが元気である時期に、しっかりとした取組みを進めることができるかどうかがポイント」(保健師

 「地元住民全戸が出資した社会福祉法人『しゃくなげ会』が子どもたちやお年寄りの暮らしを支える取組みをするなど、すでに地域住民が主体となった取り組みが実現している。けれども窓口で話をしていると、こういう方たちに届かない層として独居高齢者の問題がある。この方たちの日常は自宅でTVを見て過ごしているという実態。」(窓口職員)

 〇 八木先生からのコメント

 参加者の発言を受けて、八木先生から次のようなコメントをいただきました。

  1. 自治体消滅論は大きなエリアでの人口論、藤山さんはより細かな地域ごとの分析に基づく人口獲得の戦略で、消滅可能性自治体とされていてもその対象地域の中には人口の下げ止まりが見られるケースがあります。藤山さんに言われるような身近な地域ごとに、こういう見方考え方を進めていくことが大事です。
  2. 飯田市は返礼品のない地区ごとのふるさと納税制度を考案したわけですが、この取組みと田舎へ還ろうの取組みを切り分けるのではなく、一体的な取組みとしてとらえていくことが必要です。
  3. 若者世代、子育て世代、高齢世代に焦点を当てたターゲティングで、取組みを進めようというのが飯田市の戦略ですが、これら世代を別々にとらえるのではなく、世代を超えた交流を図りながら取組みを進めていくことも必要です。

 〇 まとめとして

 私の方からは次のようなコメントをしました。

 飯田市では「住み続けたい地域づくり」「帰ってこられる産業づくり」「帰ってきたいと考える人づくり」という3つの作りを組み合わせた人材のサイクルに取組んでいますが、「田舎に還ろう」の基本的に大事なポイントは、「住み続けたい地域づくり」にあります。これは船木参与の言う「インナーブランディング」そのものです。8月31日には自治振興センター職員全体を対象とした研修会を予定しており、船木参与が講師に予定されていますが、ぜひその点をしっかり学びとってください。

 

 自治振興センターや公民館は、地域住民と日常的なつながりのある職場であり、その地域に暮らす人々の様子をしっかりとつかむことができることがわかりました。特に保健師や的口で日常的に住民と接する職員の情報は貴重で、自治振興センターと公民館の職員がチームとして一丸になり、住民主体の取組みをしっかりファシリテートできれば、地域の将来を考えるうえでも大変力になることを感じることができる機会でした。