飯田市自治振興センター所長会研修会に参加しました 2017年8月1日

 8月1日(火)飯田市龍江公民館にて、自治振興センター所長研修に参加してきました。

 〇 飯田市「田舎へ還ろう」戦略を支える職員の力量形成に向けて

 飯田市では本年度スタートした総合計画の中で、市内20地区ごとに少子高齢人口減少に対応した「田舎に還ろう」戦略を、各自治振興センターが事務局となり、地域住民の話し合いにより策定・実行するための準備を進めています。

 そのための鍵として、飯田市佐藤健副市長は、自治振興センター職員全体が、公民館主事のような姿勢や力量をつけることで、学習を土台とし、住民主体の取組みを強化していきたいと考えています。

 飯田市自治振興センターにはセンター所長、公民館主事の他、保健師や複数の窓口担当職員が駐在しています。また職員はそれぞれ地域の自治組織であるまちづくり委員会専門委員会の事務局を兼ねています。しかし公民館主事を除くセンター職員の仕事ぶりは、まちづくり委員会と行政との連絡調整役にとどまっています。そこで、センター職員一人ひとりが、地域住民が主体となって地域の課題に向けあい解決に向かうためのファシリテート役を担うことができる姿勢や力量をつけていくことをねらいとした研修を進めようとしています。

 〇 長野県「学びの県づくり」との共通性

 一方長野県では次期総合計画の中で、「学びの県づくり」の柱の一つとして、県内各地域において、学びを土台に住民自治力の強化を支援する仕組みづくりが検討されています。飯田市の取組みは公民館的な手法を首長部局にまでウィングを広げようという試みであり、先進性モデル性があると認められる点で、この取組みを注視することは、県の政策を考えるうえでも有効であるととらえています。

 〇 九州大学八木教授と東京大学荻野特任助教らによる「自治の質量」共同研究

 このことに加えて昨年度より、九州大学大学院経済学研究院の八木信一教授と、東京大学高齢社会総合研究機構の荻野亮吾特任助教飯田市による「自治の質量に関する共同研究」が取り組まれています。

 「自治の質量」とは八木教授の定義した概念で、団体自治と住民自治のバランスのとれた状態を指します。国が進める地方創生の取組みにおいて地方自治体に権限を委譲する団体自治の強化に対し、団体自治の進行に関わる政策が立ち遅れており、近年ようやく住民自治の中核として地域運営組織の支援が進められるようになってきました。

 〇 「自治の質量」をめぐる飯田のモデル性

 地域運営組織については地方制度調査会委員などを歴任し、この制度研究の第一人者でもある明治大学の小田切徳美教授は、飯田市島根県雲南市を全国のモデルとして着目しています。月刊公民館8月号では東京大学大学院教育学研究科の牧野篤教授との対談の中で、住民自治力を支える飯田型の公民館の可能性をテーマとした対談が行われているので参照のこと。

 八木教授らによる共同研究は、住民自治と団体自治のバランスを保つための両者の橋渡しを行う機能としての飯田市の公民館・自治振興センターの役割について注目し、その仕組みの他地域への一般化可能性をテーマとするものであり、長野県が進めようとしている「学びの県づくり」の取組みを検討するうえでも有効な研究であるととらえています。

 〇 自治を支える職員の力量形成に向けて

 今回自治振興センター長会では、八木教授による平成28年度の研究についての中間報告会として開催しました。飯田市が「田舎へ還ろう戦略」を展開するうえでも、自治振興センター・公民館が住民自治と団体自治の橋渡しを行う機能をもつ機関として極めて重要であることを確認することをねらった研修としてとらえています。