上田市公民館職員の皆さんと読書会を行いました 2017年10月2日

〇 コミュニティレストラン 松尾町フードサロン

 10月2日(月)夜、上田市松尾町フードサロンで、上田市公民館職員有志による読書会に県参与の船木成記さん、田中主事とともに参加しました。

 松尾町フードサロンは中心市街地に空き店舗を活用したコミュニティレストランです。コミュニティレストランは、食を通して地域や社会の課題を目指すことを目的としたレストランで、松尾町フードサロンはNPO法人食と農のまちづくりネットワークが運営しています。同法人が別の場所で運営する「コラボ食堂」は、ワンディシェフという方式で、安心な野菜を届けたい生産者、伝統食を次世代につなげたい高齢者、若い母親世代の交流機会など様々な動機で活用されています。

 

〇 読書会に至るまで

 この読書会は、上田市西部公民館次長の中村文昭さんの呼びかけではじまりました。公民館職員は現場で地域住民の皆さんをパートナーに様々な事業に取組むことで、現場感覚を養ういわばOJTを通して学び育っていますが、ややもすると忙しさにかまけて、事業の先に目指すものを忘れて、事業をこなすことが目的化してしまうこともありがちです。そこで、自分自身の仕事や考え方を、少し仕事から離れて見つめ直してみようということから読書会は発想されました。

 もう一つの背景は、長野県参与に船木さんが着任されたことです。船木さんは前職の尼崎顧問時代、船木ゼミとして、尼崎市職員の力量形成に関わる中で、尼崎職員有志の読書会のメンターも務めていました。そこで、船木さんをメンターとした読書会を行おうということになりました。

 現在のメンバーは上田市側は中村さんの他、中央公民館の関晴香さん、上野が丘公民館の山口美栄子さん、大塚美穂さんです。

 前回6月12日(月)に行った打合せの中で、どのようなテーマの読書会にしたいか話し合った結果、「多様なライフスタイルとその価値観の背景」「ジェンダーを切り口に現代社会の課題を学ぶ」「新しいリーダーシップを学ぶ」「人口減少と過疎化について、さまざまな考え方を知る」という3つの意見が出、船木さんから推薦された「豊かさとは何か(暉崎淑子:岩波新書)」「いのちの食卓(辰巳芳子:マガジンハウス)」「サーバントリーダーシップ(ロバート・K・グリーンリーフ:英治出版)」「あなたの中のリーダーへ(西永美恵子:英治出版)」「地方消滅(増田寛也中公新書)」「田園回帰1%戦略 地方に人と仕事を取り戻す(藤山浩:農文協)」の6冊が選ばれました。

 

〇 6冊の本のレポートから

 今回は、6冊のうちいずれかの本をそれぞれ読んでみて、簡単なレポートにまとめて紹介しあうこととしました。

 今回は本のすべてを読んで臨んだわけでなく、それぞれさわりを読んだうえで、それぞれの本の概要と自分がその本を選んだ理由を交換し合い、実際に読書会として取り上げる本の選定が目的でした。

 以下それぞれの本の内容を、生涯学習課の田中さんがまとめてくれましたので紹介します。

 

「いのちの食卓」 辰巳芳子(マガジンハウス)【田中】

  食事作りに時間をかけることの重要性について提案、現在の食文化に対する問題提起をする。

 家族のあり方、はそれぞれであり、時短料理も許容できるバランスを持つことが良いのではないか。

 

サーバントリーダーシップ」ロバート・K・グリーンリーフ(英治出版)【中村、山口、木下】

 小論文のまとまりのような哲学的な感触の本。自分の経験を振り返りしっくりくる言葉を見つけ出す心地よさがある。

 リーダーが独裁国家をつくるのではなく、フォロワーだけの集団にもならないようにすることが重要。皆が市長の頭で考え「これを成し遂げたのは我々だ」とチームで目標を達成する組織を作りたい。 サーバント型のリーダー像を描き、ビジョナリストになれるようにする。

 

「豊かさとは何か」暉崎淑子 (岩波書店)【山崎】

 1989年頃の本。その当時の日本と現代の日本、共通する課題への向き合い方について学ぶ。

 これを読んでどう感じるか、豊かさとは何か、幸せとはなにか、を個々の感性に問う。何に支えられ、どう人生をデザインするかを考えていかなければならない。

 

「田園回帰1パーセント戦略 地元に人と仕事を取り戻す」 藤山 浩(農文協)【関】

 人口問題ではなく、人生問題。「人口が減っても市町村はなくならない。無くなるのは自治体である。」という船木参与の言葉がとても印象的。本書と併せて「地方消滅」も読み進めると、対照的な面を理解できる。

 

○ 読書会を行うことの意味

 冒頭でご紹介したように、OJTとしての仕事の経験に加えて、自分や仕事について振り返る機会として、今回は読書会を試みてみましたが、今回の体験を通してこの会を行うことの意味をいくつか考えてみました。

 

  1. 一人で読むよりも他者の読み方と重ねてみることで、書かれている内容をより深く読み取ることができる。
  2. 本の内容の理解にとどまらず、自分や周りのこと、仕事のこと、自分たちが暮らしている地域や社会の在り方などを仲間とともに考えていく機会である。
  3. 読書会に集う参加者同士の考え方や生き方などを知りあうことを通して、共に学ぶ仲間としてのつながりが生まれる。
  4. 学ぶことを通して、仕事の仕方、自分自身の生き方を考える機会となる。

 

○ 次回から本格的に

 次回は12月に計画しています。「サーバントリーダーシップ」「豊かさとは何か」「田園回帰1パーセント戦略 地元に人と仕事を取り戻す」を二人チームで読みあって、一つのレポートにまとめて発表しあいます。

 船木さんのメンターとしての存在感がとても効いたひと時でした。