長野県公民館大会に参加しました 2017年9月28日

 9月28日(木)塩尻市文化センターで長野県公民館大会が始まりました初日は全体会と情報交換会が行われました。

 冒頭開会式では阿倍長野県知事からの大会に寄せたメッセージを代読させていただきました。ちょうど県議会中だったので知事は都合はつかないことは当初からわかっていたことでしたが、メッセージ性をできるだけ強く出したいという知事の希望もあり、代読の白羽の矢が当たりました。

 

〇 塩尻市のワインのお話

 

 全体会の前半は塩尻市職員の赤羽誠治さんによる「塩尻市のワインについて」ワインの歴史と塩尻ワインの歴史についてお話ししていただきました。

 ロビーでは塩尻産のワインの販売コーナーもあり、レア物も売られ、ワイン好きの参加者はしっかりと買い込んでいました。

 

〇 SCOP理事長 鷲見真一さんの基調講演から

 

 後半はSCOP理事長 鷲見真一さんの基調講演です。

 テーマは「『思い』を『学び』に『学び』を『行動』に~21世紀型の公民館へのバージョンアップ」です。

 鷲見さんは現在41才。信州大学在学中に大学の仲間の皆さんとSCOPを起業されたそうです。SCOPは地域課題解決と成長に寄与する、地域のための総合政策シンクタンクです。社会調査、研修企画、市民会議のワークショップ、プロモーション、各種コンサルなどで産業、医療福祉、地域公共交通、協働制度など分野も多彩です。これまで150プラン、800プロジェクト、1500の会議に関わってこられたそうです。

 県内でもこういう若い世代が仕事としてまちづくりに関わっているということ自体とても頼もしいと感じました。

 

〇 「思い」と「学び」と「仲間」の好循環が行動につながる

 

 鷲見さんは課題解決の取り組みが継続的に発展するためにはまず自分自身が考えるありたい姿を「思い」描き、その姿を実現していくための「学び」を進め、「思い」をともに実現する「仲間」の存在が必要と言います。

 

〇 「Will:やりたいこと」と「CAN:やれること」と「MUST:すべきこと」

 

 鷲見さんは、課題解決の行動の生まれるメカニズムをコップの水に例えます。

 それが「Will」やりたいことを明確にし「MUST」求められていることとつなげ、「CAN」それを実現することができる力をつけることで、人はやる気が生まれ、コップの水があふれるように行動が生まれるといいます。

 

〇 そういう動きに寄り添うためのファシリテーション

 

 地域においてこういう動きが形になるための役割としてファシリテーターの存在が必要です。公民館で言えば公民館長や公民館主事かそれに当たるでしょうか。

 ファシリテーションとは「中立な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、そのチームの成果が最大となるよう支援する仕事」です。

 大事なのは結果ではなく、取り組みのプロセスや取り組みのプロセスで生まれるコミニケーションです。先生や司会者というより、支援者、促進役、産婆役という言葉が当てはまります。

 

〇 SWOT分析に基づいた新しい公民館像探しを

 

 それぞれの公民館で自分たちの「強み」「弱み」「機会」「脅威」を分析整理して、その中から今の時代や地域に求められる公民館像を考えるための学びを、地域住民とともに創りあげていきましょう。

 

〇 求められる構造的視点

 

 3月まで飯田市の公民館で仕事をし、地域住民の皆さんに育てられながら頑張る主事の姿を見てきました。一つ一つの取り組みを必ず振り返り次の仕事につなげていく、という仕事の仕方は身に付いてきましたが、地域や課題を構造的に見る力が課題ととらえていました。

 その意味で本日のSCOP鷲見さんの話は、とても大事な視点を与えていただいたととらえています。

 

〇 二日目は10のテーマごとの分科会

 

 長野県大会二日目は午前中、10の分科会が行われました。今年は中信地区公民館運営協 議会がチーム で大会の受け入れをしてくれましたが、分科会のうち7つは中信地区各市町村の皆さんによる企画です。

 テーマは「分館・自治公民館の可能性」「地域を育てる講座づくり」「ニュースポーツ普及による地域づくりと地域活性化」「公民館(地域)と子どもの関わり」「伝統文化を通じた文化の伝承と人材育成」「ジオパークの活動を通じて」「住民の施設利用(貸館)について考える」「身近なコミュニティ施設が支える住民自治力」などでそれぞれ公民館での実践に基づいた意見交換が行われました。

 このうち私は第10分科会「身近なコミュニティ施設が支える住民自治力」にファシリテーターとして参加しました。

 

〇 地域のつながりの中で人を育てる公民館

 

 分科会前半は東京大学高齢社会総合研究機構の荻野亮吾さんによる発表が行われました。

 ▽ 社会関係資本とは

 

 飯田に限らず公民館に共通して必要とされるのが「社会関係資本」を形成する役割といわれます。

 社会関係資本には「人と人のつながり」と「人と人とのあいだで共有された規範や信頼を伴う関係性」を意味します。

 社会関係資本には「個人あるいは一人のレベルでは実現が困難なことを可能にする機能」と「これが豊かな地域はそうでない地域と比べ、政治や経済、治安、健康の状態が良くなる傾向があること」が知られています。

 

 ▽ 公民館が持つ人材育成の機能

 

 荻野さんは東京大学牧野研究室の一員として、8年間共同研究に取り組んでいます。

 飯田市では日本最大の人形劇の祭典「いいだ人形劇フェスタ」、都市の修学旅行生を農家に泊めて農業体験などを提供する「体験教育旅行」、市民主体の中心市街地の活性化に取り組む「飯田まちづくりカンパニー」など、ユニークな試みを多彩に全国に発信しています。

 これらは「飯田モデル」といわれ、「まちづくりの主役は住民であり、行政はそれを支える黒子に徹するもの」という共通の考え方を持つ取り組みです。

 この考え方は、専門委員会や分館など住民自身が公民館の運営の主体で公民館主事は住民主体の活動を支える存在である、という公民館の姿が原点です。

 

▽ 公民館の果たしている役割

 

 荻野さんは、飯田の公民館には自治の担い手である「人材を育成する機能」「地域課題の学習を通して、課題発見・解決に取り組む団体を育成する機能」「学校をはじめとした地域の諸機関を結びける機能」があるとまとめてくれました。

 

▽ 皆が必要と感じる事業づくりを

 

 荻野さんの報告を受けて参加者同士グループに別れて意見交換を行いました。意見交換の発言を受けてた荻野さんのコメントをご紹介します。

 「発言の中で行事や事業が多いことで役員の負担感がある、という意見にたいしては、その事業の多寡よりもむしろその事業が地域にとって必要ととらえられているのか、若しくは事業の企画をするメンバー同士が納得するような話し合いを積んでいるのか、が大事です。」

 「若い世代の参加が少ないという課題については、一方では高齢社会を迎える中で、高齢世代の力が発揮できる場はまだまだ必要である、という視点と、若い人たちに自分たちの活動を継承してもらおうというだけでなく、若い人たちにゼロから任せて彼らがやってみたいことを造り出すことを見守る視点も大事です。」

 

 ▽ 学びの力を社会全体に広げたい

 

 分科会には長野県参与の船木成記さんにも参加していただきましたが、最後に次のようなコメントをしていただきました。

 「4月より長野県参与として長野県は何を誇れるのか、インナーブランディングの仕事に取り組んでいます。その中で長野県民に共通して誇ることのできるのは学習する力ではないかと感じています。これは今の時代には大変重要な力です。こういう力が日本社会全体に広がることで、少子高齢人口現象をはじめとした地域や社会の解決に結び付いていくのだと考えています。」

 「現在東京都のベテランの保健師の皆さんとの学習会に参加していますが、その方たちが共通して発言するのは、健康予防の活動で何よりも大切なのは自主グループづくりだそうです。グループの中で人は育ち、そういうグループの運営を支えるのが保健師の仕事だそうです。公民館主事の皆さんにも共通するととらえています。」

 ▽ 初めての試み「公民館をめぐる課題を考える」

 

 これまで長野県公民館大会の分科会は、各地区の実践事例に基づいて意見交換を行う形がほとんどでした。しかしこの分科会は、公民館をめぐる課題について話し合う内容でした。参加された方たちの立場や地域の状況も異なることから、なかなか共通したまとめには至りませんでしたが、これからも公民館をめぐる課題をテーマとした分科会は是非実施していけることを期待しています。