尼の國 みんなの尼崎大学オープニングイベント 2017年4月22日

4月22日(土)に尼崎市を訪問し、「尼の國、みんなの尼崎大学オープニングイベント」に参加してきました。

 

○尼の國について

 ・尼崎市の定住・転入促進の取り組みとして計画。尼崎市を「尼の國」と称しています。

 ・尼崎市では、定住や転入者促進のための大事な要素として、人に焦点を当て、魅力的な暮らし方を実現している人々を発掘し、顕在化していくことで、こういう人々が暮らしている尼崎で定住したい、あるいは尼崎に移住したいという層を広げることをねらいとして取り組みを進めています。

 ・「尼の國」が大事にしている合言葉を「おたがいさま」「おせっかい」「おすそわけ」「おこさま」「おかえり」「おしごと」「おちょうしもん」「おべんきょう」「おとなりさん」「おせわさま」とし、それぞれの合言葉にふさわしい人々を発掘し、WEBや情報誌などで紹介していくことを最初の取り組みとしています。

 ・この取り組みを進めるコアメンバーを「尼ノ物書キ組」とし、尼崎在住の女性たちで構成。メンバーはフリーライター、カメラマン、子育てサークルリーダーなど。4000人の人々を発掘紹介することを目標として活動中です。

 ・尼崎市では現在、長野県参与で信州総合ブランディングを担当する船木成記氏が、現在も非常勤特別職として顧問を務められていますが、船木氏は「インナーブランディング」という視点をブランディングの土台に据えています。これは地域に暮らす人々が地域のことに関心を持ち、愛着や誇りを持って暮らすことができている状態をさし、こういう人々の存在が街の魅力を生み、訪れてみたい街としてのブランディングとなる、という考え方ととらえています。

 ・その意味ではこれから長野県で進めようとしているブランディングの考え方の参考になる取り組みであり、特にインナーブランディングの考え方は、長野県が今年度策定する、次期教育振興基本計画の柱の一つである、「学習県信州」を考えるうえでも参考になる取り組みです。

 

○みんなの尼崎大学について

 ・「みんなが先生 みんなが生徒 どこでも学校」を合言葉に、街中いたるところで学びがあふれるまちづくりを進めることをねらいとした尼崎市のまちづくり政策です。

 ・尼崎市はもともと企業の公害問題、外国籍住民との共存の問題、災害への対応(阪神淡路大震災)など諸課題が山積した街であり、そういう課題に向き合い解決に向けて取り組みを進める運動も展開されてきた街です。課題に向き合い解決に向ける取り組みはすなわち学びであり、そういう学びの歴史を改めて振り返り、これからのまちづくりに生かしていこうとするための取り組みが「みんなの尼崎大学」の試みです。

 ・この取り組みを発案したきっかけの一つは、船木さんが尼崎市の職員の皆さんを飯田市につなぎ、飯田型公民館の実際を学んだことにあります。

 ・飯田型公民館の特徴の一つは、公民館事業の企画運営を地域住民自身が主体となり、その取り組みを行政職員である公民館主事が支えるしくみにあり、飯田研修に参加した尼崎市の職員は、市職員である公民館主事と地域住民が一つの事業の企画運営を共に汗しながら進める様子に感銘し、そういう姿を尼崎でも展開したいとヒントとし、飯田研修に参加した職員が中心となって設けられたプロジェクトの中で発案されたのが「みんなの尼崎大学」構想です。

 ・最初に取り組まれたのは「みんなのサマーセミナー」で、8月の第一土曜、日曜に市内の公共施設をフィールドとし、「みんなが先生、みんなが生徒、どこでも学校」を合言葉に、市民と職員が合同で実行委員会を編成し、2回目となる平成28年度には、325講座に3000人が参加する催しとなりました。

 ・「みんなのサマーセミナー」をきっかけとし、尼崎市全体をキャンパスとし、学びのあふれるまちとするために平成28年度には「環境」「子育て」など10のテーマごとに「オープンキャンパス」を展開、空き店舗を手作りでリニューアルして集う尼崎ENGAWA化計画メンバーが主催する「オトナテラコヤ」、市営大庄公民館を拠点に市民自らが事業の企画運営を行う「大庄ことはじめ学館」など、日常的な学びが広がりつつあります。

 ・そして今年度から、学びを土台とした市民主体のまちづくりを支えるために「ひと咲きまち咲き担当局」を設置するとともに、廃校となった大学のキャンパスを市が譲り受け、ここを拠点として学びの取り組みを広げています。

 ・これらは「私の学び」が「みんなの学び」となり、それが「まちの学び」となっていくことを目指した取り組みです。

 

○尼の國、みんなの尼崎大学オープニングイベント

 ・尼の國、みんなの尼崎大学の取り組みの開始を外にアピールすることをねらいとして旧聖トマス大学の学生会館で開催されました。

 ・尼の國オープニングイベントでは、「おしごとをつくる人」長村和美さんがMCとなり、「尼ノ物書キ組」という「尼の國の各所やできごと、尼ノ民の物語にベンとカメラで迫り、記事にする物書き集団」の女性3人による尼の國に住まう人々の魅力について紹介されました。

 ・続いて地元のお寺で住職を務める中平了悟さんがMCとなり、障害を持つ人たちと街の人をつなげる取り組みを進める清田仁之氏、コミュニティFMのパーソナリティを務める牧野篤史氏、尼崎市職員で元お笑い芸人の経験を活かし、市内各地でお笑い行政講座を開催する江上昇氏と桂山智哉氏による、尼の民の特徴についてのトークライブが行われました。

 ・その後会場を移動し、旧聖トマス大学校舎のうち10階建てのビルを「ひと咲きタワー」と称し、その8階のオープンスペースを会場にこのスペースの有効活用をテーマに参加者全員がグループに分かれ、ワークショップを行う「みんなの尼崎大学体験企画」を開催、終了後交流会という流れで進められました。

 

○感想

 ・「乗りの良さ」、会話の中に自然にはさまれる「ボケと突っ込み」など、尼崎らしさが満載したイベントでしたが、柔らかさの中にも学びを通して人の生き方の本質に迫る、深みのある催しであり、また、共同企画者である市民と職員の関係が非常に良好で、市民協働という言葉の実が伴うイベントでした。