長野市立芋井公民館を訪問しました 2017年5月30日

 

 5月30日(火)に長野市芋井公民館を訪問し、小林公子公民館長と意見交換を行いました。小林館長は長野県公民館運営協議会長も務められています。

 

〇 芋井公民館について

 芋井地区は長野市西北部に位置し、長野市中心市街地から車で10数分の場所にあるが山に囲まれた中山間地域で、地区内には飯縄高原も抱え、人口2,500人の地域です。高齢化率は40%近くで、市内でも少子高齢過疎化の進む地域だそうです。

 私が暮らしているアパートからも車で10数分で行けつける場所ですが、道路は、飯田でいうと大平街道に向かうような道や景色で、こんなに近いところに山深い地域があるんだなぁと大変びっくりしました。

 長野市には29の公民館が設置されていますが、芋井公民館は平成27年度より芋井地区住民自治協議会による指定管理の施設として運営されています。長野市は地域の住民自治協議会から申し入れがあれば指定管理を行う方針を持ち、現在9館が指定管理施設だそうです。

 小林館長は今年で11年目を迎え、直営時代から公民館長を務めてられています。もともとは社協職員で、公民館長になる前は学童保育に関わっておられたそうです。公民館主事の都築裕信氏は現在60歳。今年4月採用たばかりの方ですが、地元育ちですがずっと横浜市で働いており、早期退職してこの仕事につかれたそうです。

 地域には6つの地域公民館(飯田でいう分館)があり、地域公民館長により組織された地域公民館連絡協議会がいわばかつての公民館運営審議会に位置付けられ、芋井公民館の重要な事項を決定する役割を持っています。また年3回発行する公民館報いもいは、住民から選出された編集委員によって編集発行されています。

 公民館事務室に隣接して図書室がありますが、ここは長野市図書館の分館として位置付けられており、貸し出しは公民館事務職員が担当しています。

 訪問当日はちょうど「苔玉づくり」の講座が開設されており、10数人の受講者が参加していました。地元の女性が講師となり、講座に取り組んでいました。講座の最中の会話の中には近所のお年寄りの健康問題についての話題も交わされており、また、講座終了後はお茶を飲みながら講座の感想や、次にやってみたい企画についての意見交換が行われるなど、公民館が地域の茶の間として親しまれていることを実感しました。小林館長は、この講座のように地元の方たちが互いに講師となりながら自分の経験を他者に伝えることを通して、講師自身の生きがいと、それぞれの経験の伝承などをねらっているそうです。実は私も講座に参加させていただき、「苔玉」をお土産に持ち帰らせていただきました。

 小林館長は地元芋井小学校のコミュニティスクール・コーディネータをつとめていますが、地元の伝統料理の学習など、地域と学校を結ぶ交流活動が盛んに行われており、公民館がコミュニティスクールの運営に大変大事な役割を果たしています。

 公民館の近くに市役所の出先機関である支所が立地していますが、ここに住民自治協議会の事務所も併設されています。住民自治協議会には事務局職員や福祉ワーカーなど複数の職員が雇用されており、また地域おこし協力隊員も2人所属しています。住民自治協議会では公民館の指定管理を受託しているほか、ワークショップによる防災マップ作り、ボランティア講座、農村民泊受入れの会など地域活性化に向けた多彩な活動が進められており、住民主体の地域づくりの拠点としても機能しています。

 住民自治協議会と公民館の関係は、公民館が出会いや交流の場、住民自治協議会は公民館活動で培ったつながりを活かして地域づくりに取り組む場、という役割分担があるようにとらえました。

 

〇 長野市の公民館について

 市内公民館の連携組織として長野市公民館連絡協議会があり、2ヵ月に一度公民館長会や主事会が行われています。公民館長会は互いの公民館事業の情報交換や、教育委員会としての政策の共有などが主な内容で、主事会の内容は専ら研修です。

 長野市が直営する公民館に配置された行政職員はすべて係長級であり、したがって年齢的には全員が40歳以上の職員です。

 芋井公民館に前に勤務していた職員にお話を聞かせていただきましたが、現在の小林館長になってからずいぶん雰囲気が変わったそうで、配置された職員の人柄により公民館の雰囲気は大きく変わるようです。特に公民館長の影響が大きいようです。

 長野市の公民館は、公民館全体を統括する中央公民館のような組織はなく、教育委員会事務局生涯学習課が所管しています。

 

〇 まとめとして

 長野市は住民自治を進めるために住民自治協議会の運営を支援したり、住民自治協議会の希望があれば公民館を住民自治協議会による指定管理施設にするなど、住民自治の振興を図る取り組みを進めています。

 これに対して飯田市の場合は、住民自治の振興を図りながらも、自治振興センターや公民館に行政職員を配置し、住民と行政の橋渡し役として機能させています。あわせて自治振興センターや公民館の現場に行政職員を配置することで、職員が市民協働の姿勢や方法を学び、その後他の職場に異動した後も、市民協働のマインドを持った職員としての仕事ぶりが期待されています。

 飯田市の牧野光朗市長は政策投資銀行佐藤健副市長は総務省出身であり、県外他地域の自治体職員との交流経験がありますが、飯田市の職員は他地域の自治体職員と比べて、圧倒的に住民への接近力が高い、と評価しており、その背景には公民館主事など現場における地域住民との協働経験によるものが大きいととらえています。

 それぞれの自治体の政策判断によるものではあると思いますが、公民館活動の応援や公民館職員力量形成を考えるに際して、公民館職員が行政職員であるか、地域住民であるかの違いは大きく、支援の仕方は分けて考えることが必要ではないかととらえました。